英語が苦手で論文内容が頭に残らないのですがどうしたらいいですか?
論文の読み方ってあるんですか?
読み方のコツとかあるなら包み隠さず教えてください。
当記事では上記の疑問・ご要望にお答えします。
本記事の内容
- 前提:論文を英語で読むのは、誰もが最初は苦手なので安心せよ
- 英語苦手人が論文をスラスラ読むために知っておくべき読み方のコツ
- 英語の苦手意識は論文が解決してくれる
修士で卒業後、大手企業で研究しているくりぷとバイオ(@cryptobiotech)と申します。
学生時代は1日1報、感謝の論文読みをしていました。
Peingで以下のような質問をいただいたので、詳細にご説明しますね。
ご質問ありがとうございます!
論文の読み方はいつか記事にしようと思っておりましたので、この機会に記事化させてくださいませ! #peing #質問箱 https://t.co/kIeWHpKtgo— くりぷとバイオ@研究職×投資家 (@cryptobiotech) April 21, 2019
僕も研究室に配属された時は「英語論文読むのだるすぎる…」と思っていたので、質問主さんのお気持ちは死ぬほどわかります。
当時はまだGoogle翻訳もそこまで発達しておらず、泣く泣く翻訳しながら読んでた記憶が。
だからこそ、僕と同じように悩む学生を無くしたい…。
そこで当記事では「英語論文をスラスラ読むために必要な読み方のコツ」について、自分がいま企業でも実践している方法をまとめます。
これを読んで真似してもらえば、英語論文が読めるようになるので是非ともご一読を!
目次
前提:論文を英語で読むのは、誰もが最初は苦手なので安心せよ
まず英語で論文を読む際の大大大大前提ですが、最初から英語論文がスラスラ読める人はいません。
あなたの周りにいる先輩や指導教官で、論文を短時間で大量に読み漁れる人がいますよね?
そういった化け物を見ると「ああ、自分って研究の才能無いかも」と思ってしまいがちですが、まったく比較する必要はなし。
研究を数年間やってきた人に、あなたがいきなり比較して勝とうとするのはむしろ自惚れ。
論文を読んでいないのだから、最初のうちは論文読めなくて当たり前ですし、焦らなくて大丈夫です。
英語論文を読むのが苦手でも、誰でも確実に読めるようになるコツはあります。
次項で論文がスラスラ読めるようになるコツをお教えしますので、それを真似してみてくださいね。
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英語苦手人が論文をスラスラ読むために知っておくべき読み方のコツ
英語論文を読むのが大嫌いだった自分が、スラスラ読めるようになった方法は以下の通りです。
- まず基本的知識を日本語論文から習得する
- 基本的知識で武装して英語レビュー論文にトライ
- 自分の研究テーマに近い英語論文を読む
- 読んだ論文を短く要約して発信する
- 論文を読みまくる(たまに異分野も)
上記のやり方を繰り返してもらえれば絶対に英語論文が読めるようになりますし、読む速度も上がりますよ。
1つずつ説明していきますね。
まず基本的知識を日本語論文から習得する
まず大原則ですが、英語論文をいきなり読まずに、日本語論文から読み始めましょう。
あなたが担当することになった研究分野の日本語レビュー論文を、先輩や指導教官にお願いして頂くのが吉。
なぜ英語論文から読み始めてはいけないかと言うと、英単語の翻訳と翻訳された日本語の意味調査をダブルでやらなければならないからです。
例えば再生医療分野の研究者であれば「Regenerative Medicine」という言葉を聞いたら「ああ、再生医療ね」とわかります。
が、英語論文に慣れていない&再生医療という言葉の本質を知らない初心者だと以下のようになります。
「Regenerative Medicine」って何だよ、調べないと…
↓
調べたら「再生医療」って出てきたけど、そもそも再生医療って何?
↓
「人体の組織が欠損した場合に体が持っている自己修復力を上手く引き出して、その機能を回復させる医学」か…
↓
なんとなく意味はわかるけど、つまりどういうこと?
↓
こんなことを各単語ごとにやらないといけないの!?
↓
英語論文読むのキライ!
こんな感じで、基礎知識を知らないで英語論文を読むと「わからないことスパイラル」に陥ります。
それは結果的に「英語論文苦手マン」を生み出すきっかけになります。
とはいえ日本語論文で基礎知識をつけろと言っても抽象的なので、もう少し具体的に説明します。
「その日本語論文に書かれていることを全部理解するまで徹底的に読め」
です。
その日本語論文を理解するためなら1週間でも2週間でもかけて良い。
研究室で実験技術習得もあると思うので、1か月くらいかけてしまっても良いです。
とにかく、まずは1つの論文を完全網羅すべし。
そして日本語レビュー論文の知識をくまなく身に付けたら、また先輩や指導教官に言って新しい論文をもらいましょう。
もしくは実験医学のような専門誌を指導教官に買ってもらうのも良いですね。
で、それらの新情報をまた徹底的に読む。
知っている情報はさらっと読み飛ばし、知らないことを調べまくる。
これを2~3回繰り返せば、あなたがこれから取り組む研究分野の基礎知識が大体身に付いているはずです。
日本語レビュー論文で基礎知識を武装できたら、次は英語論文に移行しましょう。
基本的知識で武装して英語レビュー論文にトライ
基本的知識で武装したら、今度は英語のレビュー論文にトライします。
英語のレビュー論文も先輩や指導教官にもらうのが良いですね。
あなたにとっても楽ですし、研究室の教育的にも「これは読ませておきたい論文」が必ずあるはずですので。
ただ、もし自分で英語レビュー論文を探したいということであればNature Review系かCell誌のTrends in系がおすすめです。
参考ジャーナル例
読むと決めた英語レビュー論文で意識したいのは以下の2つ。
- 英単語の意味を、身に付けた基礎知識と照合する
- 「なんとなく理解」で先に進まない
前項で例に出しましたが、今のあなたなら「Regenerative Medicine」を「再生医療」と訳しても理解できるはず。
「再生医療」という言葉が何を意味するか把握していますよね。
このように、あなたがやるべきは「英単語の意味をあなたの基礎知識とひたすら照合する」ことです。
例えば再生医療系の単語ばかりで恐縮ですが、以下のような感じ。
- Regenerative Medicine → 再生医療
- differentiation → 分化
- Pluripotent stem cells → 多能性幹細胞
上記のように英単語と日本語のすり合わせができてくると、徐々に英語論文を読むスピードが上がっていきます。
英単語の翻訳→意味を調べる→意味把握、というプロセスが無くなっていくので。
ただし英単語の意味照合だけではなく、前項で述べたように「わからないところは徹底的に調べる」は意識しましょう。
英語に慣れつつ、さらに知識も充填していくイメージです。
英語レビュー論文も2~3報読めばかなり慣れてくるはず。
ちなみにここまでの作業を院試が始まるまでに終わらせておくと、院試後の研究がとてもスムーズになります。
これらが読み終わったら、いよいよ自分の研究テーマに近い最新論文を読んでいきます!
自分の研究テーマに近い英語論文を読む
いよいよあなたのテーマに直結する最新英語論文を読んでいきましょう!
そして、ここでもまたまた先輩と指導教官に頼ります。
先輩と指導教官は頼ってナンボなので、B4のうちは頼りまくるのが良いです。
さて、今回は過去の情報をまとめてくれた「レビュー論文」とは違い、先端を行く最新論文です。
どのように読み進めれば良いでしょうか?
「論文 読み方」でググると色々な方法が出てきますが、個人的におすすめなのは以下の順序で読んでいくことです。
- Introduction(緒言)を“納得”するまで読む
- Conclusion(結論)を読んで成果を把握する
- Results(結果)を見て「こういう実験をすれば今回の結論が導けるのね」と学ぶ
- Materials&Methods(試薬と実験方法)で実験手法を学ぶ
- Discussion(考察)で筆者の考えを知る
順々に説明していきます。
Introduction(緒言)を“納得”するまで読む
まず重要なのは「Introductionを“納得”するまで読む」です。
なぜならIntroductionには「なぜこの研究をしようと思ったのか?」が全て書かれているから。
例えば「オタマジャクシの体表ヌルヌル成分は創傷治癒効果を示す」という論文があったとしましょう。
この場合、Introductionには以下のようなことが必ず書かれているはずです。
- そもそもオタマジャクシとは?
- オタマジャクシの体表ヌルヌル成分とは?
- 体表ヌルヌル成分に関してこれまでに知られていること
- 体表ヌルヌル成分に関してまだわかっていないこと
- 体表ヌルヌル成分に関して今回明らかにしたこと
「過去の知見、今回この研究をやるに至った背景、実際に何を明らかにしたか」が網羅されているのがIntroduction。
ここを“納得”せずに読み進めても時間の無駄です。
なぜなら「なんでこんな研究しているんだ…?」という疑念が拭えず、論文の内容が頭に入ってこないから。
それゆえ繰り返しますが、最新論文を読む際には「Introductionで自分の頭を“納得”させること」が最重要。
まずはここを抑えましょう。
Conclusion(結論)を読んで論文の成果を把握する
Introductionに納得したら、次はそのままConclusion(結論)を読みます。
先ほどの例でいえば、オタマジャクシの体表ヌルヌル成分に関して研究した結果、何を明らかにしたのかを具体的に理解します。
結論例
- ヌルヌルから新しい化合物を同定した。
- ヌルヌル成分がヒト皮膚細胞の増殖を促進した。
- ヌルヌル成分をヒトに塗ったら実際に傷の治りが早まった
などなど、ヌルヌル成分の何を明らかにしたのかは無限の可能性があります。
論文の結論を先に理解しておけば、無限の可能性をかなり絞り込むことができますよ。
Results(結果)を見て「こういう実験をすれば今回の結論が導けるのね」と学ぶ
IntroductionとConclusionを把握したら、いよいよ実験結果に目を通していきます。
読むのは「図の説明(Figure legends)」と「図(Figure)」。
まず図の説明を読んで実験結果が把握できるかどうかを確認します。
もし図の説明だけで把握できたら次の図へ。
把握できなかったらResults本文で、その図の説明に該当する箇所を探して読みます。
Results本文には「なぜその実験をしたか?」という理由が書かれているので、そこを見つけ出します。
ここでも「図」と「図の説明」を理解するまでしっかり読むのが大事。
どうしてもわからない箇所はあまり悩まずに先輩を頼りましょう。
先輩の意見を聞きながら読むと、実験結果の解釈を間違える可能性が減るのでおすすめです。
Materials&Methods(試薬と実験方法)で実験手法を学ぶ
結果を把握したらMaterials&Methods(試薬と実験方法)に目を通します。
目を通す箇所例は以下の通り。
- どんな実験系を採用したか?
- どんな試薬を使用したか?
- 試薬の反応時間はどの程度か?
- ウチでもできそうか?(大事)
あなたのテーマと近い論文に記載された実験手法は、そのまま活用できる可能性が高い。
論文に書かれた実験手法は真似してもOKなので、Materials&Methodsから学ぶことは多いですね。
ちなみに、
「この論文のこういう実験系、ウチでもできますか?」
「この実験をやりたいのですが先輩教えていただきませんか?」
と先輩に聞くことで、実験スキルを獲得することもできるのでお試しあれ。
Discussion(考察)で筆者の考えを知る
最後はDiscussionに目を通しましょう。
Discussionには「なぜ今回の結果が出たか?」「次に何がするか?」という筆者視点の情報がてんこ盛り。
今回の結果を明らかにしてもなお、未解明な部分は何か?
といった情報も書かれているので時間があれば読んでみるのがおすすめ。
個人的には、よほど自分たちと競合になり得る論文じゃないと深く読みませんが…笑
と、こんな感じで僕はいつも論文を読み進めております。
Introduction → Conclusion → Results → Materials&Methods → Discussionの順です。
論文を読む順番には個人差がありますが、「論文の読み方がわからない」という方は真似してみてくださいね。
読んだ論文を短く要約して発信する
今はSNSが発達した時代ですので、せっかくなら世の中に論文情報を発信しましょう。
僕も目を通した論文は以下のようにまとめて、excelに記録&SNS発信しています。
- Introduction:3行で要約
- Methods:3行で要約
- Results:3行で要約
- Conclusion:1行で要約
Conclusionの部分をSNSで発信するようにしています。
以下のような感じですね。
これは凄いぞ…!
全身麻酔が効くために必要な脳内神経領域が同定されました!(neuron)驚くべきはこれら神経が“活性化”することで全身麻酔が効くという事実。麻酔なんだから“抑制”ではないの!?
あとこの脳内領域を破壊するとマウスは眠りにつけなくなるらしい。怖いな笑https://t.co/ItSWOYnBex
— くりぷとバイオ@研究職 (@cryptobiotech) April 20, 2019
SNSで発信すると自分と違う研究分野の人たちとも繋がれるし、自分に興味を持ってくれたりするのでおすすめです。
あとTwitterだと140文字で要約する能力も磨けますし、たまに上記ツイートのように大きくバズることもあります。
アウトプットの練習になるので、読んだ論文を簡潔にまとめて発信するクセを学生の頃からつけておくといいですね。
頑張って読んで、頑張って要約したツイートがバズると「もっと読んで発信するぞ」とモチベーションがめちゃくちゃ高まりますよ!
論文を読みまくる(たまに異分野も)
というわけで論文を読めるようになるまでのプロセスを解説しました。
英語嫌いの僕が論文を読めるようになるまでの過程を綴りましたので、真似してもらえれば1~2年で僕レベルまで余裕で到達できるかと。
最新論文を理解できるようになったら、あとは論文を読みまくるだけです。
効率性を意識せずに、とにかく読む。
先輩や同期が研究室から帰っても、休みの日でも、とにかく読む。
効率性は後から勝手についてきます。
あとできれば自分が読む論文のうち1割くらいは、異分野の論文を読んでいくと良いですね。
例えば再生医療研究者なら、がん免疫分野を学んでみるとか。
もしくは最近めちゃくちゃホットなので、遺伝子編集分野でも良いですね。
異分野の学会に参加しても話についていけますし、異分野を組み合わせる発想が自然にできるようになるのでおすすめ。
僕みたいな凡人でもそれなりに英語論文を読めるようになったので、是非この紹介した方法を真似してみてくださいね!
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英語の苦手意識は論文が解決してくれる
というわけで当記事は以上です。
最初は英語論文がチンプンカンプンで研究が嫌いになりますが、それは普通のことなのでご安心を。
最初は誰でも1報読むのに1日くらいかかって絶望します。
でも慣れてくると論文読むのが半日、2~3時間、1時間、30分と明確に読む時間が減っていきます。
その成長をふと実感した時は、思わずガッツボーズが出ます。
焦ることなかれ、です。
知識を貯めて、発信して、世の中の人達からSNSを通じて反応をいただく。
これがルーティン化すると論文読むのがめちゃくちゃ楽しくなるので、焦らずコツコツやっていきましょう。
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Let’s enjoy your science life!
良き研究者人生を。