論文紹介っていつもどんな論文を選べばいいかわからない。
紹介して炎上するのが怖いからどうやって論文を決めたらいいのか教えてほしい。
当記事では上記のご要望にお応えいたします。
本記事の内容
修士課程で大学を卒業後に、大手企業で研究しているくりぷとバイオ(@cryptobiotech)と申します。
研究室の論文紹介では、ほぼ毎回「面白かったよ」と周りから褒めていただいておりました。
当記事では、研究室にいる学生が最も恐れているといっても過言ではない「論文紹介における論文の選び方」について解説します。
学部4年、修士1年、修士2年の各段階で、僕が当時どのように調べていたか思考法を伝授しますね。
もちろん企業研究者として数年経った今での視点も盛り込んでいますので、論文選びに困っているあなたの役に立つかと。
数分で読めるので、当記事を読んで「論文紹介が怖い」や「炎上したくない」という不安から解放されちゃってください!
目次
論文紹介(雑誌会、ジャーナルクラブ)の意味とは?
本項では「論文紹介(雑誌会、ジャーナルクラブ)をやる意味」をあなたにご説明します。
研究室で論文紹介する意味として、あなたが知っておくべきことは以下の通りです。
- 自分の専門分野知識を深めることができる
- 自分の資料作成能力・プレゼン力を磨くことができる
- 自分の研究分野のライバルを知ることができる
- 自分が重要だと思う論文を研究室内に共有できる
正直、論文紹介はメリットありまくりです。
余談ですが僕が所属していた研究室では、論文紹介は半年に一回ありました。
持ち時間は人によりけりですが30~60分ほどで、面白くない論文や発表がわかりにくい場合はもう一度やり直しというスタイル。
僕も現役の頃は相当プレッシャーを感じておりましたが、不思議なことに紹介した論文は未だにしっかりと記憶に残っています。
そして論文紹介を経験すればするほどスライド作成能力・プレゼン力が磨かれていくのを実感しておりました。
あと「自分と似た分野でこんなに面白い研究をしている人がいるのか」とモチベーションが高まることもあった。
1つの論文を完璧に理解して他者に発表するという経験は、あなたの研究力をグッと高めてくれます。
もちろん酷い発表をすると炎上することもあったりしますが、それも教育の一環。
論文紹介は怖くてつらいけれど、全力で取り組んでみる価値ありですよ。
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論文紹介(雑誌会、ジャーナルクラブ)でおすすめしたい論文の選び方
本項では論文紹介(雑誌会、ジャーナルクラブ)でおすすめしたい論文の選び方について解説します。
1つずつ解説していきますね。
学部生4年(B4)での論文の選び方
学部生4年での論文紹介はレベルの高いジャーナルを選ぼうとせず、自分の実力の範囲内で選ぶのがいいでしょう。
なぜならNature誌, Science誌, Cell誌などを論文紹介しようとしても、理解するための知識が足りていないから。
僕が学部生4年の方におすすめしたいのは、自分の専門領域に関する論文を日々論文ニュースサイトから貯めていくというやり方。
なぜ論文ニュースサイトかと言うと、その論文の簡易要約があり、論文の主旨を理解した上で読み始めることができるから。
そしてニュースサイトの論文は当然ですが最新論文だらけなので、古い論文を選んでしまう危険性もなし。
Web of Knowledge(Web of Science)などから検索キーワードで探しても良いですが、ゼロから始めると効率が悪いです。
この方法で貯めていって、自分の担当が近づいたら今まで貯めてきた論文ストックの中であなたが面白いと思う論文TOP3を選びましょう。
そしてそれらの論文を先輩や指導教官に見せて相談するのがGOOD。
先輩や指導教官に「それ面白そうだね」と言わせたらこっちのものです。
ただしあなたのTOP3が「面白くない」と言われた時は、素直に先輩に頼るのがおすすめ。
先輩が面白いと思う論文の基準も学べますし、先輩があなたのレベルに合わせた論文を紹介してくれる可能性が高い。
まとめると、学部生4年は以下のような論文の選び方がおすすめです。
- 論文ニュースサイトから日々専門領域の論文を貯めていく
- 自分の番が近づいたらTOP3の論文を先輩や指導教官に見せる
- OKが出たら論文熟読に移行、NGなら先輩に頼る
学部生4年の頃は先輩を頼ってナンボですので、どんどん頼りつつ色々学ばせてもらいましょう!
ちなみに僕が普段使っている論文ニュースサイトをまとめた記事もありますので、ぜひご活用ください。
修士1年(M1)での論文の選び方
修士1年でおすすめしたい論文の選び方は以下の通りです。
- 自分の専門領域の最先端・最高峰の論文
- 自分の研究を進める上でのライバルとなる質の高い論文
学部生4年の1年間であなたの知識量はけっこう溜まっているので、そろそろ世界トップクラスの論文に切り込むべき。
Nature, Cell, Scienceなどを選んでもいいですし、それだとちょっとレベルが高いという人は姉妹誌でも良いですね。
例えばバイオ系を専攻する学生なら、以下のような姉妹誌から論文を探していくのもあり。
- Nature Biotechnology
- Nature Medicine
- Nature Communication
- Nature Chemical Biology
- Science Signaling
- Science Advances
- Cell Stem Cell
- Cell Metabolism
- Cell Chemical Biology
レベルの高いジャーナル誌は当然ですが、面白い論文も多い。
一般的な論文よりもはるかに多くの実験量、かつ多彩な実験をしているため非常に勉強になります。
しかも自分と同じ専門領域であれば、その論文を出している研究機関はあなたのライバルです。
研究は競争ですので、自分のライバルがどれくらい先に進んでいるかを知ることは大事。
ライバルの立ち位置を知ると研究のモチベーションにもなるのでおすすめです。
なお余談ですが、修士1年の段階でトップジャーナル誌を苦なく読み込めるようになればかなりレベルが高いと言えます。
「さすが○○さん」と言ってもらえるように、修士1年から難しい論文をわかりやすく説明できるか挑戦してみましょう!
修士2年(M2)での論文の選び方
修士2年でおすすめしたい論文の選び方は以下の通りです。
- 自分の専門領域に該当するNature誌、Science誌、Cell誌の論文
- 新規テーマ提案に繋がる別分野の論文
めちゃくちゃドストレートですが、もう修士2年になったらNature誌、Science誌、Cell誌を紹介しましょう。
もちろんこれら3誌に良い論文が無い場合もあるので絶対ではありませんが、意識しておくべき。
なぜなら1つの研究分野で3年目に突入する人間が、このレベルのジャーナル誌を理解できないとまずいからです。
これらのジャーナル誌は読んでもらうとわかりますが、めちゃくちゃ情報量が膨大です。
自分だけがなんとなく理解するならまだしも、それをわかりやすく他人に説明するとなるとかなり時間がかかります。
このレベルのジャーナル誌を精読して内容を全理解できれば、一気に研究者としての視野が広がり、知識も増えます。
あなたの研究室でどれくらい論文紹介が実施されるかにもよりますが、四半期に一回レベルならこれら3誌を選ぶべき。
ただしこれら3誌にこだわらず、別の研究領域の論文を紹介するというやり方もOK。
例えば再生医療を専門とする人間が、腸内細菌や遺伝子編集、免疫学といった異分野論文を紹介する形ですね。
あえて別分野の論文を紹介することで、今まで自分に無かった全く新しい思考を生むことができます。
例えば再生医療研究者が遺伝子編集分野を学ぶことで、
心臓に分化するために必要な遺伝子をCRISPRスクリーニングで同定できないか?
といったことを閃けるようになったりします。
また、別の研究分野をわかりやすく紹介することで、ボスたちもその分野を意識するようになることも。
その結果、研究室で新しい研究テーマが生まれるようになれば、それはあなたの功績。
修士2年は専門領域の最先端を理解するのはもちろん、新規テーマ提案も期待されています。
新規テーマ提案の経験は企業に入ってからも役に立ちまくるので、ぜひ論文紹介の場を利用してテーマ提案を考えてみてください!
修士2年だと就活が終わって研究のやる気を失いがちですが、そこで怠けずに新規テーマを提案できるとかなりメリットがあります笑
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誰もが意識すべき論文紹介(雑誌会、ジャーナルクラブ)における一番大事なコツ
最後になりますが、論文紹介で論文を選ぶ際に最も重要なコツは「自分が面白いと思えるかどうか?」です。
なぜなら自分が面白いと思っていないことを人に面白く伝えるのは無理だから。
僕も論文紹介で「面白くないけど良い論文(先輩に紹介された)」を発表したことがありますが、ほとんどの人が寝ていました…泣
良い論文だからといって全員が聞いてくれるわけではないと実感した瞬間でもあります。
それゆえ「自分が面白いと思うか?」を絶対基準(コツ)として、論文を選ぶようにしましょう。
自分が心の底から面白いと思う論文ほど周りも面白いと思ってくれる現象は、間違いなくあります。
皆の時間を無駄にするつまらない論文紹介ではなく、「聞いてよかった」と思わせる論文紹介を目指しましょう!
というわけで当記事は以上です。
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ではではっ
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