企業研究職に興味があるのですが、アカデミアとどう違うのでしょうか?
実際に企業研究職の方から意見を伺いたいです。
当記事では上記のご要望にお応えします。
本記事の内容
- アカデミアと企業研究の違い5選
大学を修士課程で卒業後、企業で日々研究に取り組んでいるくりぷとバイオ(@cryptobiotech)と申します。
学部生から修士まで3年、そして企業研究職として3年以上のキャリアを積んできました。
当記事ではそんな自分が「アカデミアと企業の違い」を赤裸々に解説しますね。
「なるほど、そういう点を“違い“として感じているんだな」
と、他の記事には無い違った視点の具体例もあるので、ぜひ参考にして頂ければ幸いです。
当記事は数分で読めますし、読んでいただければ企業研究職を詳細にイメージする一助になりますよ。
目次
アカデミアと企業研究の違い5選
僕が考えるアカデミアと企業研究の違いは以下の通りです。
1つずつ説明していきますね。
目的意識の違い
アカデミアと企業研究で最も違うのは「目的意識」です。
特に「論文」に対する意識が全く違います。
院生として研究していた頃は、ボスから「研究がある程度まとまったら必ず論文化しろ」と常に言われ続けてきました。
休日返上で論文を執筆した素晴らしい記憶がよみがえります(闇深発言)。
が、企業に入ってからそれがパッタリと無くなりましたね。
「あ、企業では研究(≒論文)が主役ではないんだな」
と心の底から自覚するのに、恥ずかしながら企業に入ってから1年くらいかかってしまいました。
企業は「製品」が主役…!
完全私見ですが「研究のために研究する」アカデミアとは全く違う環境だと、入社3年以上経った今は強く感じます。
研究予算の違い
これは僕の出身ラボがそこまでお金持ちじゃなかったからかもしれませんが、研究予算はやはり企業が圧倒的だなと感じます。
もちろん世界トップクラスの超ビッグラボだと研究費も莫大ですが、それに劣らない研究費が投資されていると感じます。
僕が企業研究職について驚いたことは、一例ですが以下の通り。
(バイオの例なのでイメージしにくい方は申し訳ありません…)
- ピペット用チップ詰めを自分でやらない(段積みのやつ買う)
- 細胞培養用培地(DMEM)、PBSなどは既製品(院生の頃は自分でつくってた)
- 効果があるかわからない高価な試薬も普通に買える(数mgで10万円!?)
- 電動マルチピペッター完備(手が腱鞘炎にならない…)
- 実験用機器が最先端&充実しすぎ(アッセイがほぼ全自動!!)
「ああ…院生時代もこれだけお金あったら、もっと少ない労力で結果出てたんだろうな」
と思うくらい企業での研究費は膨大。
「僕の院生時代の苦労はほとんどが“お金”で解決可能だった」と自覚して一時的に落胆するレベルです(泣)
研究スピードの違い
企業での研究スピードは、アカデミアの研究スピードとレベルが違います。
正直、アカデミアと比べて進むスピードが速すぎる。
あと企業では1つのテーマを複数人で担当することがあります。
細胞を扱える人、全合成ができる人、タンパク質の構造解析ができる人。
こういった多様性あふれる研究員が同時に1つのテーマをやることもしばしばで、それゆえテーマの進行速度は圧倒的です。
アカデミアだと「全部1人で覚えて実験する」みたいなケースもありますが、企業ではめったにないですね。
「どんどん成果を出したい!」という人にとって、企業研究職は最高の環境だと思います。
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経済的安定性の違い
院生の頃は無償で研究をしてたので、企業に入ってからの経済的安定性は凄まじいです。
僕が田舎&貧乏な家庭出身だからかもしれませんが、両親2人の年収合計を入社1年目で超えたのは割と衝撃でした。
もちろん博士課程も学振があるので月20万円程度もらいながら研究に励むことができます。
が、少なくとも大手の研究職だと“修士卒でも”その金額以上もらいながら日々研究できます…。
少なくとも大手企業に入ることができれば、1年目で学振給与よりも2~3倍の給料がもらえます。
それゆえ、経済的安定性は間違いなく企業の方が良いと(僕は)感じます。
研究者の年齢層の違い
企業研究職に就いて驚いたのは、一緒に研究をする人の年齢!
40~50代の方と一緒のテーマをやったりすることがあります。
実験中に他愛ない会話をしていると「私の息子が今度31歳になるんだよ」とか言われることが。
僕は20代なので、その方のご子息よりも年下という事実…!
そういった多様な年齢層に囲まれながら研究をするのが企業研究の特徴なのかなと。
40~50代の方がこれまでに積み上げていた経験を伝承してもらうことも可能なので、正直かなり勉強になります。
あとその方を通じて、アカデミア界のビッグボスを紹介してもらうこともできますね。
「ああ、彼は僕の大学時代の後輩なんだよ。今度一緒に飲みに行く?」
みたいなドッキリイベントもあったりして、ビッグボスと一気に差を縮められることもありますよ。
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(個人的には)企業研究の方がアカデミアよりも良い
というわけでアカデミアと企業研究の違いについて簡単にまとめてみました。
「アカデミアと企業研究はどちらが良いのか?」
これに関しては正解がないですけど、僕個人としては企業研究を推しますね。
もちろんいま企業側の人間なので、ひいき目が入っているのは重々承知です笑
でも企業の方が成果が早く出るし、多様な経験を積めるし、経済的安定性も得られるし、精神的に安定します。
余談ですが、入社前に抱えていた「やりたい研究ができない…?」みたいな不安も杞憂でした。
僕個人としては、アカデミアを志望する人も一度は企業研究の経験を積むのが良いのかなと感じます。
経験してみて初めてわかることも多くあるので。
2019/08/10追記
しそごはん用研究者さん(@ONODA_in_Onodac)が弊記事を見て「アカデミア側からのご意見」を記事にしてくださいました!
アカデミアでご活躍される方からのご意見ですので、アカデミア志望の方にはとても参考になること間違いなしです…!
実際に僕が拝読しても「そうなのか…!」と目から鱗が落ちまくりですので是非ご一読を!
というわけで当記事は以上です。
今後もニーズがあれば“企業研究のリアル”を記事にしていきますね。
「こんな内容が知りたい!」ということがあればいつでもご意見ください。
ちなみに、大企業研究職のメリットデメリットを知りたい方は以下の記事もお役に立つはず。
ぜひご一読ください。
関連記事 大企業で研究職に就くメリットデメリット5選【企業人が本音で語る】