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■研究室ー企業の共同研究ってどんな感じ?
■企業との共同研究テーマを担当するメリット・デメリットは?
■企業との共同研究テーマをやると内定がもらいやすくなるの?
こんな疑問が解決できる記事を用意しました。
この記事で解説する『企業との共同研究テーマを担当するメリット・デメリット』を知れば、共同研究を担当する際の不安が無くなります。
なぜなら当記事では、実際に研究室で企業との共同研究を1年以上担当した僕が『共同研究のリアル』を徹底的に解説するからです。
記事前半では『企業との共同研究とは?』を、後半では『共同研究のメリット・デメリット』を説明しますね。
この記事を読めば共同研究に対する意識が高まり、効率よく研究が進められるようになりますよ。
数分でサッと読めますので、ぜひ最後までご覧ください!
目次
研究室ー企業の共同研究にはどういうパターンがあるのか?
そもそも企業から共同研究を依頼される場合、どのようなパターンがあるのでしょうか?
企業研究職から見て、企業から大学に依頼する共同研究は以下の3パターンがあります。
共同研究パターン①:委託研究
委託研究は企業から『こういった研究がしたいので、こういうことをしてください』と依頼されるタイプの共同研究。
『その研究室の技術を企業が持っておらず、その技術を活用しないと目的が達成できない』という場合に委託されることが多いですね。
あと『技術は必要だが、企業でその技術を保有する必要がない』という場合にも委託されます。
例えば『再生医療で腎臓をつくるための化合物を探したい』という化学メーカーのニーズがあったとします。
でもその化学メーカーはiPS細胞から腎臓をつくる技術を持っていない。
でも評価に使える化合物ライブラリーなら腐るほどある。
こんな時は化合物を研究室に供与して、腎臓の分化系で評価してもらうことができますね。
こういう時は『委託研究』という形になります。
共同研究費+化合物ライブラリーを企業側が渡して、1年で化合物を評価し終わってもらうという感じです。
共同研究パターン②:協働研究
『大学と企業の技術を組み合わせないと研究が進まない!』という場合には、このタイプの共同研究が行われます。
例えばバイオ系企業が『新しい機能性素材を天然物から探したい』と考えたとします。
その企業では豊富な天然物素材と、それらを評価するための実験系も有しています。
ただし、それらの天然物から有用成分を単離・分画する技術が無い。
上記のような場合は、『協働研究』という形を取ります。
上記の例だと、企業が大学に天然物素材を提供し、大学側がそれをどんどん単離・分画していきます。
で、その分画ライブラリーを企業側に送付し、それらの有用性を企業側の評価系で検討するといった流れ。
共同研究パターン③:派遣研究
企業側から社員が派遣されて、その研究室に何年か在住するタイプの共同研究です。
『その研究室の技術を獲得したい&社内導入したい』という場合に選択されるケースが多いですね。
余談ですが、企業側から派遣される研究員が修士卒の場合は、この派遣研究の成果を利用して『博士号』を獲得するケースも多いと聞きます。
僕が研究室で与えられたテーマもこのタイプでして、その企業の方は共同研究の成果を論文化して博士号を取得されていましたね。
学生からすると『企業人の考え方』を間近で学べるので、このタイプの共同研究が最も勉強になります。
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企業との共同研究テーマをやるメリット
『研究室で企業との共同研究を担当するメリット』は以下の通りです。
順々に説明していきますね。
ビジネス的視点が身につく
企業との共同研究テーマを担当することで『ビジネス的視点』を手に入れることができます。
『ビジネス視点』と言われましても…という感じだと思いますが、例えば以下のような視点で研究を見れるようになりますよ。
- 誰が必要としている技術なのか?(顧客ニーズ)
- 競合技術と比べて優れている点はどこか?(知財的優位性)
- 技術の実現・製品化にどれくらい期間がかかるか?(コスト意識)
- その技術による製品はどれくらい売れるのか?(売上試算)
企業との共同研究を担当すると『企業はモノを売るために研究している』ということがリアルに実感できます。
企業人の『情報収集力』や『時代のトレンドを掴む力』を学べるという点で、共同研究は学生にとって価値があります。
企業での研究スピードの速さを実感できる
共同研究することによって『企業の研究スピードの速さ』を肌で理解することができます。
『どれくらい速いの?』と言われると説明が難しいのですが、例えば以下の作業量だと企業なら1年かからないと思います。
■1人の学生が3年かかって修論にまとめるレベルのデータ量
共同研究を経験したことで僕は『企業に追いつく意識で日々研究しないと時代に取り残される』と良い刺激になりました。
『企業人の生産性の高さ』も合わせて理解でき、いかに自分がダラダラ研究していたか痛感しましたね…笑
うまく成果を創出できれば企業とのコネができる
共同研究テーマでかなり良い成果を出すことができたら、そのまま共同研究先の企業に内定がもらえるケースもあります。
共同研究には必ず『共同研究期間』があります。
せっかく良い成果が出つつあるのに期間が終了してしまうと、その先に進めなくなってしまいますよね。
そうなると成果創出のための技術やノウハウが無くなってしまうので大学側も企業側も困ります。
それゆえそのテーマを社内でうまく進めるために、共同研究テーマを担当する学生をそのまま採用したりします。
仮に興味がある企業からの共同研究の打診が来た場合、それをやらせてもらえるよう全力で指導教官と相談してみるのが吉。
企業研究者の経験やノウハウを学べる
共同研究をすると『企業研究者がもつ技術やノウハウ』を学ぶことができます。
僕がこれまでに知っているケースだと、企業研究者の派遣は30代の社員が多いです。
その人は間違いなくあなたが所属する研究室のどの学生(学士~博士)よりも長い研究経験を積んでいます。
そういった研究者が派遣で来てくれると学生は以下のような有用情報を“タダで”聞きまくることが可能…!
- なぜ今の企業に行ったのか?
- どうしてアカデミアではなく企業なのか?
- 今までどんな研究をしていたのか?
- 研究者として生きていく上で必要なことは何か?
- 就職と進学で悩んでいるので相談に乗ってください!
『OB訪問しないと聞けないようなことが毎日気軽に聞けてしまう』のは素晴らしすぎることですね。
共同研究で企業研究者が派遣されてきた場合は、遠慮なく色々なことを聞いて自己成長に活かすのがおすすめ。
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企業との共同研究テーマをやるデメリット
一方で『企業との共同研究を担当するデメリット』には下記のようなことがあります。
1つずつ解説していきますね。
研究室内テーマよりも厳しい成果創出を求められる
共同研究テーマは研究室内テーマよりも厳しく成果創出を求められることがあるので注意したいところ。
なぜなら共同研究は“期限”が決まっているからで、予想通りの進捗が無かった場合は契約終了になるケースもあるからです。
経験したからこそわかりますが『共同研究先が満足するデータを出せないと頑張ったことは無価値』という厳しい現実を突きつけられることも。
上記のような厳しさに立ち向かう勇気と意志力を持った学生なら共同研究を担当することになっても大丈夫です。
しかし『研究に対するモチベーションがない』とか『頑張らずに良い結果だけが欲しい』とか思っている学生は担当しない方が無難ですね…。
自分が取り組んだ研究成果を外部発表・論文投稿できない
共同研究を担当するデメリットは『自分が取り組んだ研究成果を対外発表できないリスクがある』ということです。
なぜ対外発表できないリスクがあるのか。
それは『企業は研究成果を特許化することが最優先で、外部発表(学会・論文)は二の次』だからです。
あと共同研究契約にもよりますが、成果を出せても外部発表できるのは特許が公開されてからが多いです。
『特許出願から特許公開まで1年半かかる』ので、もしあなたが修士卒で就職するなら、卒業までに論文を書くのは難しいでしょう。
それゆえ共同研究を担当するなら『共同研究以外のテーマを持つこと』が大事。
『共同研究がうまくいかない・進まない・失敗する』は普通
共同研究に対して『これは企業が期待しているテーマだから成果が出そう』と勘違いすると後悔します。
共同研究でも普通に実験はうまくいかないし、予想通りに進まないし、失敗だらけです。
『自分が取り組んだ研究成果を外部発表・論文投稿できない』でもお伝えしたように、共同研究に期待しすぎないことが大事ですね!
共同研究は「企業への内定」ではなく「企業人から何を学ぶか」を目的にせよ
上記で紹介した『企業との共同研究を担当するメリット・デメリット』を理解すれば、共同研究への“不安”はなくなります。
最後にもう一度だけ復習しましょう!
共同研究にはどういうパターンがある?
- 委託研究(企業からの片道依頼)
- 協働研究(企業と同時進行)
- 派遣研究(企業人が派遣されてくる)
共同研究のメリット
- ビジネス的視点が身につく
- 企業での研究スピードの速さを実感できる
- うまく成果を創出できれば企業とのコネができる
- 企業研究者の経験やノウハウを学べる
共同研究のデメリット
- 研究室内テーマよりも厳しい成果創出を求められる
- 自分が取り組んだ研究成果を外部発表・論文投稿できない
- 『共同研究がうまくいかない・進まない・失敗する』は普通
なお共同研究を担当する際は『企業への内定』を意識するのではなく『企業人から何を学ぶか』を意識した方が成長できます。
『もしかしたら内定もらえるかも!?』と期待しすぎる
↓
成果が出なくて内定をほのめかすことは言われなかった
↓
研究に対してやる気を一時失う(ふてくされる)
僕はまさに上記のようになったのですが『研究室生活で大きく損したな』と思いました。
ぜひ『自己成長』のために共同研究をしてくださいね!
なお『企業研究者って普段何を意識して研究しているの?』を知りたい方は、以下の1冊は絶対に読んでおきましょう。
僕は以下の書籍を企業に入ってから知り、今では四半期に一回は読み直しています。
理系学生の段階から読めば間違いなく僕よりも早く成長できますので、是非手に取ってみてください。
というわけで当記事は以上です!
なお『研究職の実態(リアル)』に興味がある方は、研究職に就きたい方はぜひ以下の3記事にも目を通してくださいね!
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