研究職って異動とかあるんですか?
研究だけやっていたいのですが、企業研究職でも異動があるなら事例を知りたいです。
当記事では上記の疑問にお答えします。
本記事の内容
- 【大前提】企業では成果を出せる研究職でも異動になる可能性あり
- 実際に自分が社会人になってから耳にした研究職の異動事例
- 異動せずに研究職のままずっといられるケースはむしろ珍しい
大学を修士課程で卒業後、企業で日々研究に取り組んでいるくりぷとバイオ(@cryptobiotech)と申します。
研究職として社会人を数年経験する中で、研究職の異動をいくつも耳にしてきました。
当記事は「企業研究職の異動」について詳しく知りたい理系学生・理系院生に向けた記事になります。
先にネタバレしてしまいますが、研究職でも異動は普通にあります。
もっと言えば“研究だけ”で会社生活をずっと続けていられる人は、ほぼ皆無と言っても過言ではありません。
当記事は数分で読めますし、読んでいただければ企業研究職のイメージがより具体化されますので是非ともどうぞ!
目次
【大前提】企業では成果を出せる研究職でも異動になる可能性あり
まず大前提をお話しておきますが、企業では「めちゃくちゃ研究で成果を出せる研究職」でも異動になる可能性があります。
これはなぜかというと、企業では「研究」が主役ではなく「製品化」が主役だから。
研究でバリバリ成果を出せる人は、「製品化」に繋がる別職種についても同様に成果を出せると期待されがち。
実際に私が知っている例でも、研究がバリバリできていたけれど別職種に異動になった方は何人もいます。
「この人は出世させたいな」と思われた人は、多様な視点を持たせるために別職種を経験させるというケースがあります。
企業で上に立つためには、当たり前ですが、研究だけできる人では話になりませんからね。
研究はもちろん、開発や生産の話も理解し、経営学にも富み、人事経験もする。
そういった人財を育てるには、やはりその職種に就かせて経験を積ませなければ。
もしかしたらあなたは「いやいや出世とかいいから研究をやらせてくれ!」と思うかもしれませんね。
確かにそれは僕も似たような想いを抱いているのでよくわかります。
開発や生産に異動したら本当に活躍できるかも不安ですし、何より研究が楽しいと思っているんだから異動なんてしたくないですよね。
しかし残念ながら、企業はあなたの希望を全て受け入れてくれる存在ではありません。
経営陣や人事の判断で「会社の利になる」と思われたのであれば、研究職でも別職種に異動することは普通にあります。
「研究職で入ったから、これで一生研究ができる!」
という思考は割と勘違いなので、もしあなたが今そのような思考をお持ちなのであれば気をつけた方が良いと考えます。
本当に研究だけを一生やりたいのであれば、アカデミアの道で生きていくのが間違いなく正しいです。
実際に自分が社会人になってから耳にした研究職の異動事例
前項では「研究職は異動が普通にある」と解説しました。
とはいえ実際にどのような異動があるのかがわからないと不安になるだけですよね。
そこで本項では、僕が社会人になってから耳にした研究職の異動事例に関して解説しますね。
僕が所属している企業で目にした事例や、別企業で研究職として働いている同期などから聞いた事例は以下の通りです。
- 研究→研究への異動(分野変更)
- 研究→開発への異動
- 研究→品質保証への異動
- 研究→生産への異動
- 研究→技術営業への異動
- 研究→知財への異動
- 研究→広報への異動
- 研究→人事への異動
順々に説明してきます。
研究→研究への異動(分野変更)
これも研究職の異動の1つでして、別の研究領域を担う部署に異動となるケースがあります。
このケースは例えば経営判断で「研究領域Aの投資は控えて、研究投資Bの投資に力を入れよう」となった場合に起こります。
研究→開発への異動
これも企業でよく起こり得るケースの一つ。
基礎研究で何年か経験を積ませた後に開発部門へ異動になるのは、おそらくどの企業でも確率が高いと言えるのでは。
企業研究者は「製品」に繋げる研究をすることが至上目的です。
ですが「そもそもどうやって製品はできるの?」ということを知らずに、製品化に繋がる良い研究はできるでしょうか?
研究職から開発職に異動し、そこからまた研究職に異動した人を知っていますが、「開発経験は研究でも役立つ」と皆さんおっしゃいますね。
研究と開発は「R&D職」とまとめている会社も普通にありますし、開発職異動は研究者としても企業人としても良い経験になると思います。
研究→品質保証への異動
研究職の業務として「分析」を行っている人は、こちらも異動先としてよくあるパターン。
企業にとって「製品の品質を担保する」というのは非常に大事で、研究職の僕から見ても「研究」より大事だと思います。
研究職として「最先端の分析技術」を学ばせた後、品質保証に異動してその技術を導入させる。
こういった意図が込められているケースもあります。
人によってはそこから研究職に戻ってくる方もいますし、そこから品質保証で積んだ経験を活かして海外工場の品質保証を担う方もいますね。
ちなみに研究職→国内品質保証→海外品質保証は割と出世コースのことも多く、そこから生産職管理職になったりするようです。
以下の記事でも書きましたが、生産職は海外経験すると研究職なんて目じゃないくらい貯金が増えます。
「研究職にこだわりがそこまでない」という方は、おすすめの異動コースと言えるかもしれません。
研究→生産への異動
これは化学工学系(流体力学とか)や、機械系の研究職の人が該当しやすい異動ケースですね。
あとバイオ系でも「あるタンパク質の生産量を上げるための各種検討」とかやってる人は該当する可能性があります。
余談ですが、Ph.Dを持っている人でも生産職に異動になった事例を伺ったことがあります。
その時の企業事情に依存するとは思いますが、国内企業ならPh.Dでも普通に異動があると思っていた方が良いですね。
研究→技術営業への異動
研究から技術営業への異動も割と聞く話ですね。
技術営業は科学知識を持った人間じゃないと難しく、研究職は“研究以外でも”こういった職でニーズがあります。
例えば「A~Bを初心者向けの情報、B~Cを中級者向けの情報」みたいに、相手の視野に立った情報提供をする能力は研究でも必須ですよね。
こういった研究の「重要点」を素人にもわかりやすく説明できる研究者は、絶対に技術営業も向いています。
「研究者だけど顧客ニーズを肌で感じる経験がしたい」
と思っている人にとっては、技術営業はなかなか良い経験になると感じます。
研究→知財への異動
研究から知財関係への異動は珍しくない話ですね。
やはり特許を担当する人は“研究がわかる人”じゃないと厳しいからです。
研究経験を持っていれば、特許を読むだけで「どれほど凄い特許なのか」をある程度判別することが可能。
また、知財関係に異動した場合「弁理士」の資格を獲得することも可能なので、手に職つける資格としては有用なのかなと。
ただし、これまで僕が知っている事例では研究から知財に異動して、また研究に戻ってきた人はいないです。
管理職になって“マネジメント”として研究部門に戻ってくる話はちらほら耳にしますが、“プレーヤー”として戻ってきた例はないですね。
研究→広報への異動
割と少ないですが、研究から広報に異動するケースもあります。
広報は自社のプレスリリース資料を作成したり、メディアとの連携などの業務があります。
最近はインターネット社会により情報が氾濫していますよね。
こういった社会情勢において、企業として“正しい情報”を伝え続けることは非常に大事。
特に科学の場合、わずかな説明の違いで伝わる意味が劇的に変わることも多いので。
- 薬を投与したらがんが消えた!(完全に無くなったイメージ)
- 薬を投与したらがんが観察できないレベルまで縮小した!(観察ができなくなっただけでまだ残っているイメージ)
みたいな感じです。
それゆえ、企業プレスリリースを発信する役割を担う広報として「科学に精通する人財」は非常に重宝されます。
研究→人事への異動
学生の方はイメージがしにくいかもしれませんが、実は研究から人事に異動するケースもあります。
「研究全く関係ないやん」とあなたは思ったかもしれませんがその通りで、人事に異動した場合は研究と1ミリも関連しない業務が待っています。
採用担当やら、社内人事調整やら、社員成績管理やらですね。
僕が知っている例ではバリバリ仕事ができる研究職でも人事に異動になるケースがあります。
意外に思われるかもしれませんが、研究から人事を経る人は「出世コース」だったりします。
もちろん全員が絶対そうだとは言いませんが、例えば研究開発部門長クラスになる人はほとんどが人事経験を持っています。
当たり前ですが、企業は研究開発“だけ”できる人財が大きく出世することはないので、それ以外の職種経験が重要です。
研究から人事に異動になったときは「終わった…」ではなく「やった出世コースか!?」くらいに構えておくのがいいかもしれません笑
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異動せずに研究職のままずっといられるケースはむしろ珍しい
というわけで研究職の異動事例についてお伝えしました。
「意外に研究職の異動ケース多くないですか?」と思ったあなた。
はい、多いです笑
やはり国内企業だと研究職から別職種への異動が多いと思いますね。
海外のように専門性で雇用しているわけでなく、いわば「ゼネラリスト」を養育する風土があるためですね。
それが良いか悪いかの議論は答えが出ないので置いておくとして、こういう事例があるのは事実。
研究職として入社する前にこの事実を知っておけば、「じゃあもし研究職から異動になったらどうしよう?」とケーススタディが可能です。
ぜひ当記事を読んだあなたは「研究職以外の職種に異動したらどうしよう?」と一度考え見てくださいね。
その視点は企業に入ってから大いに役立ちますので。
というわけで当記事は以上です。
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ではではっ