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■研究室でどんな能力が求められているのかがわからない。
■同期とテーマも研究分野も違うからそもそも比較しようがない。
■B4、M1、M2でどのような目標を設定するべきか教えてほしい!
こんなご要望をお答えする記事を用意しました。
ここで解説する『理系の研究室生活(B4, M1, M2)で設定すべき達成目標』を把握してもらえれば、研究室で何を成すのか・何を身に付けるかべきかがわかります。
なぜなら当記事では、修士3年+企業研究職3年以上の僕が、「ここまでできていればそのB4, M1, M2は非常にレベルが高いな」という基準をまとめるからです。
この記事を読めば『B4ではこれを意識すれば良いのか!』とか『M2までにこれを達成しよう!』など決まるので、あなたのモチベーション向上にも活かせます。
数分で読めますし、ぜひ最後までご覧ください!
目次
B4:研究室で与えられたテーマを理解し、+αにトライ
B4で意識しておくといいのは以下の2つです。
順々に説明しますね。
院試までの前半戦:研究室で与えられたタスクに全力を尽くす
研究室に入ったばかりのB4は『何をすればいいのかわからない状態』から始まります。
論文の探し方・読み方も、実験器具や実験機器の使い方も、その研究室の暗黙ルールも全て知らないはずです。
そのような状況下でまずすべきは「指導教官や先輩から与えられたタスク」を全力でこなすこと。
理由としては「研究が進まない・うまくいかない学生にありがちな特徴5選」の記事でまとめた通り、何もわからない状態で1人で進めるのは効率が悪いからです。
まずは指導教官や先輩から指示されたことをこなす過程で、
- 自分のテーマの最先端は今どういうことがホットなのか?
- 自分のテーマの研究領域ではこれまでに何が研究されてきたのか?
- 研究室ではその領域に対してどういうアプローチをとってきたのか?
- それらを加味して今の自分のテーマでやるべき事は何か?
ということをまとめます。
最初の段階では、先輩から渡された論文を読むことも多いでしょう。
ただし焦ることなかれ。
気を付けてほしいのは「先輩から渡された英語論文を翻訳しながらいきなり読まないこと」です。
まずは『自分の研究領域の日本語レビュー』を読みまくることが重要です。
日本語レビューを読んで基礎知識をつけておくと、いざ英語論文の単語を翻訳した時に「あ、これはそういう意味か」とすぐわかるようになります。
英語論文をガッツリ読み込むのは、研究領域の歴史を理解してからでも全然遅くないです。
何事もまずは基本から!
院試休みに入る前に『担当研究領域の基礎知識習得』を意識しましょう。
なお「英語論文の読み方がわからない」という方には、毎日一報を日課にしている僕がどのように論文を読んでいるのか以下の記事にまとめてます。
ぜひ合わせてご覧ください!
院試後の後半戦:実験せよ、論文読め、実験せよ、論(以下略)
院試後にあなたがやるべきことは以下の通りです。
- 院試前にやっていたことの復習(先輩を活用せよ)
- 実験、実験、実験、実験、そして実験
- 論文からの論文&論文、そして論文に始まり論文で終わる
順々に説明します。
院試前にやっていたことの復習(先輩を活用せよ)
院試をめでたく突破した後は、まず『院試前にやった実験や読んだ論文の知識』を思い出すことから始めましょう。
羽目を外していきなり「ヒャッハァ!実験だァ!」とか始めると、コンタミ起こして先輩から怒られるので注意が必要です。
コンタミ(コンタミネーション)
科学実験における異物混入や汚染を指す言葉。
無菌培養下の細胞がコンタミしてしまうと除菌作業などで1~2週間実験が止まる。
しかも細胞を培養する機械は研究室共通なので先輩たちの実験も止まる。
つまり袋叩きにあう。
「コンタミ」は生物系科学者を震え上がらせる恐怖の言葉。
ドラクエで例えるとザラキーマ。
ちなみに自分だけで思い出そうとするとけっこう時間がかかります。
ですのである程度の復習が完了したら、
「このテーマの最先端と、自分がやるべきことってこういうことでいいんですよね?」
と先輩に聞いてしまうのがおすすめです。
自分の研究テーマの背景が思い出してきたら、いよいよ自分のテーマを本格的に進めます。
実験、実験、実験、実験、そして実験
院試前のことを思い出してきたらいよいよ本番です。
実験せよ
卒論に向けてとにかく実験を繰り返しましょう!
ただし気を付けるべきは「1人で物事を進めないこと」です。
頼ったり、相談したり、提案したりなど『周りを巻き込むこと』が研究をうまく進める上で肝要。
実験結果を出して考察したら、その都度先輩に相談して頼りまくるというのがおすすめ。
1人で進めるよりも優秀な先輩とディスカッションした方がよっぽど成果創出の時短になります。
あと余談ですが、僕は卒論までの目標として『M1で学会に出るための成果を絶対出す!』ということを掲げていました。
M1が始まって比較的すぐに『秋の学会申し込み募集』の通知が来るので、それを達成するにはB4である程度まとまった成果がないといけません。
どうしても同世代の研究者がどんなレベルなのか肌で実感したかったので、B4の頃はガムシャラでした。
いま振り返ってみると、卒論で良い結果を出せるように頑張るのは当たり前。
B4で達成すべき目標としては『M1で学会に出るためのデータをB4で取り終える』が良いでしょう。
論文からの論文&論文、そして論文に始まり論文で終わる
実験をとにかくするだけでなく、日々論文に目を通すことも大事。
B4の頃は自分の研究領域に特化して学習していくでもOK。
もし1つの分野だけだと「なんとなく飽きる場合」は科学ニュースサイトを活用するのが吉。
「科学の情報を日々仕入れる」ということが習慣づけられるだけでもB4は十分かと。
あと、院試後は少しずつ英語論文を読むようにしましょう。
具体的な作業量としては『週に1報しっかりと隅々まで読み込む』ということをしていればOK。
Nature、Cell、Scienceの御三家クラスの論文は、必要になるまでまだ読まなくても良いですね。
B4で達成すべきチャレンジングな目標としては、
『英語論文を読むことを習慣づけて、それを先輩たちに要約して説明するクセをつける』
くらいが良いかと思います。
論文をただ読むだけでなく、それを「わかりやすく」共有する意識を身に付けておくと、周りも同じように情報を共有してくれるようになります。
なお「どういう科学ニュースサイトを参考にすればいいの?」という方は、僕が普段使っているサイトをまとめた記事があるのでご覧ください!
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M1:自分のテーマで成果を創出する(学会発表、論文投稿も視野に)
M1になったらもう「自分のテーマを理解すること」は終わりにしましょう。
自分のテーマを理解することから『成果の創出』が求められます。
M1秋の学会に出たいのであれば、M1の5~6月の段階で『こういった結果で発表します』という成果が必要。
B4で怠けてしまうと、研究室同期がどんどん学会に行くようになって焦ります。
なお成果を創出するために『M1で意識しておきたいこと』は以下の通りです。
- 学会ではとにかくアピール&知り合いを増やす
- 学振の申請に向けて論文投稿を意識する
学会ではとにかくアピール&知り合いを増やす
学会発表は『自分の研究成果を世の中に知ってもらうこと』が最重要です。
ただし同じくらい大事だと個人的に思うのは『自分と同世代の人間がどれぐらい凄いかを知ること』です。
M1にもなると、成果を出す人と出せない人が研究室同期の中でも分かれてきますよね?
仮にあなたが最も研究室内で成果を出していたとしても「自分が最も成果を出している」と誇ってしまうのは「井の中の蛙」。
だからこそ学会発表では自分の研究を発表するだけでなく、ぜひ『他の人の発表』も積極的に聞いてください。
そして自分が凄いと感じた同期とは今のうちに知り合っておきましょう。
世の中は狭いもので、浅く広く繋がっておくとどこかでバッタリと出会う機会があります。
学振の申請に向けて論文投稿を意識する
M1に学会を経験すると『凄い人がいるなぁ』と知ることができ、良い刺激を得られると思います。
『研究で生きていきたい』と思う人も出てくるのではないでしょうか。
そろそろ「博士課程進学」というものが1つの選択肢として現れてきますよね。
就活か、進学か。
非常に悩むと思いますが、仮に博士課程に進学するのであればやはり『学振』を申請することが重要かと。
学振に通れば月に200,000円位いただけるので、少なくとも生活に困ることはなくなり、全力で研究に没頭できる…!
そういう意味で『学振はM1の段階から目指すべき目標の1つ』だと思います。
それを目指すにあたって、筆頭著者で論文を投稿していることが重要。(必須ではありませんが)
そうなるともうM1の秋頃から論文投稿の準備をしないとM2の学振申請に間に合いません。
したがって僕は学会から帰ってきたらすぐに「論文を書かせてほしい」と先生に相談し、
- どういう論文としてまとめるか
- どういう図が必要か
- どこに投稿するか?
などを相談して、M1の10月頃から本気で論文を書き始めました。
初の論文投稿は想像以上に大変でしたが、なんとか就活が本格化する前には筆頭著者で論文が受理されました。
M1の段階で論文を執筆する経験は、博士課程に進学しても就職しても絶対に役に立つのでぜひトライしてみてください。
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M2:新規テーマを提案して採用される経験をしよう
M2になったら与えられたテーマをこなすことに加え『新規テーマを提案して採用されること』を目標にしましょう。
博士課程に進学しても、企業に就職したとしても、新しいことを提案する力は必須です。
なぜなら誰かから与えられたテーマをただやるだけであれば、今はAIだったり、そのAIを活用したロボット等がやってしまうから。
今後AIロボットに負けないためにも、自分で新しいものを創造するという経験をぜひ積み上げるべし。
ちなみに新規テーマを提案するコツは以下のような感じです。
- 自分が今やっている研究テーマの延長線という位置づけは崩さない(完全新規テーマはボスが基本的に許可しない)
- 今の世の中の課題は何か?という視点を身に付ける
- 「そのテーマに取り組めば何を明らかにできるか?」をしっかりと自分の頭で理解する
- 何度も上位者とやりたいテーマに関して議論し、足りていない部分を徐々に追加していく
ちなみに課題提起は『地球温暖化』とか『マイクロプラスチックゴミ問題』とかの社会課題でも結構ですし、『自分がやっているテーマの課題解決』でもOKです。
いずれにせよ関連論文を100報くらい片っ端から読んで、
と考えるのがテーマ提案の肝ですね。
ぜひM2の間に新規テーマを創出し、新しい研究室テーマにできるように挑戦してみましょう!
なお【研究テーマの見つけ方】テーマを変えたいけど思いつかないと嘆く学生が取るべき行動5つにて、新規テーマを提案する際の方法論を解説しています。
大学・大学院を卒業する前に「新規テーマ」を提案したい!という方はぜひご一読ください!
良き大学・研究室生活を送って研究者ライフを謳歌しよう
上記で紹介した『理系の研究室生活(B4, M1, M2)で設定すべき達成目標』を知ってもらえれば、今後研究室での生活をどう過ごすか考えるきっかけになるでしょう。
最後にもう一度内容をまとめておきますね!
理系の研究室生活(B4, M1, M2)で設定すべき達成目標とは?
- B4:まずは自分のテーマを理解し、学会発表に必要な成果創出(+α)にトライ。
- M1:学会発表で多くの研究者と話そう。論文投稿も視野に入れよう。
- M2:研究室の次世代を担う新規テーマを提案して「新しい価値を創造する力」を磨こう。
とはいえ、あくまでこれは僕自身が研究室時代に考えていたことなので、必ずしもあなたに当てはまる内容ではないかもしれません。
ですが上記を意識しながら研究を日々行っていたおかげで、結果として筆頭著者2報、共著1報という成果を得ることができました。
僕よりもすごい人は山ほどいると思いますが、1つの指標としてお役に立つのではと考えます。
皆さんもぜひ素晴らしい研究室生活を送って、良き研究者になってくださいね。
それでは当記事は以上です。
ではではっ
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