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メリット
・「博士号を持っていない」劣等感から解放
・金銭的不安がない状態から取得を目指せる
・入社後の職種ミスマッチを回避してから取得できる
・自分の卒業後の就職先を心配しなくて良い
・最悪、博士号を取得できなくてもダメージは最小限
デメリット
・仕事、家族、+α(博士課程)はやはり厳しい
・別に博士号を取得したから出世できるわけでもない
・論文執筆は業務外でやることになる可能性あり
・社内で博士号取得について揉め事になる可能性あり
・異動・海外転勤で諦めざるを得なくなる可能性あり
こんな悩みを解決できる記事を用意しました。
ここで解説する『社会人から博士課程進学するメリット・デメリット』を把握すれば、修士卒で研究職に就いてからのキャリア戦略に役立つになるでしょう。
また、もしあなたが修士課程学生であれば「そのまま博士進学するか?就職してから博士進学するか?」の悩みを解決する一助になるはずです。
当記事では企業研究職として3年以上の経験を積み、かつ現在(2020年4月時点)博士号取得に向け邁進している自分が社会人から博士進学するメリット・デメリットを赤裸々に解説します。
「修士卒で企業に入ったら博士号取得はもう無理なの?」
「修士卒で研究職に配属されたけど、博士号って狙えるのかな?」
と1ミリでも思ったことがあるなら、ぜひ当記事をご一読ください。
数分で読めますので、作業の合間の小休憩時にでもご覧いただければ幸いです。
目次
社会人から博士課程進学するメリット5選
修士卒研究職が考える「社会人→博士進学するメリット」は以下の通りです。
順々に解説していきますね。
「博士号を持っていない」劣等感から解放(キャリアにも活きる)
修士卒研究職の方だけが持つ悩み?かもしれませんが「研究やってるのにPh.D持ってないんだよなあ…」という葛藤・劣等感から解放されます。
仕事で知り合った他社研究員の方と名刺交換したとき、名刺に(Ph.D)と記載されていると「おお…この人ドクターか」と思うんですよね。
その心情には「自分が経験していないことを乗り越えた事実に対する称賛」と「自分も取得できたかもしれないのに…という葛藤・劣等感」が混ざっています。
もちろんその心情は口に出さなければ他人にバレることはないので、生活上は何ら問題ありませんよ。
しかしその葛藤・劣等感が胸につかえていて、何かの拍子で自分の心をかき乱し、モヤモヤするのは心理的によろしい状況ではないなと感じます。
もしあなたがPh.Dに関して僕と同じような(他人に言えない)悩みを抱えているのであれば、社会人で博士進学するのはメリットが大きいと考えます。
金銭的不安がない状態から取得を目指せる
社会人になってから博士課程進学を志せば、学生にとって深刻な悩みである「お金がない」「奨学金の返済が…」という金銭的不安が(ある程度)解消されます。
何を隠そう自分も「金銭的不安」が博士進学を諦めた決定打でして、家が貧乏だったゆえ「これ以上両親に迷惑かけたくないな」と思っていました。
学振に通ればある程度の金銭的余裕ができることは否定しません。
が、修士卒で企業に入れば学振でもらえる金額の2倍以上を給料でもらえるケースもあります。
そうすれば奨学金返済は毎月でき、日々3~5万円の貯金をし、かつボーナスを丸々“博士課程進学用の資金”として貯めることが可能。
金銭面不安は「誰かからのアドバイスで解消できる問題」ではないので、不安を感じている人にとって社会人博士はおすすめです。
入社後の職種ミスマッチを回避してから取得できる
個人的に感じる「修士卒で研究職に就き、数年後に社会人博士課程に進学する最大のメリット」はこれです。
研究職(or R&D職)に配属されて「研究を仕事にできる」と確定してから博士号取得を目指せるのは大きなメリット。
日本って本当におかしな国だなと思うのですが、1つの研究領域を極めた貴重な博士卒人財が全く経験のない「生産職」や「技術営業職」に配属されたりするんですよね。
もちろん博士卒でそのまま研究職に就かれる方もたくさんいます。
が、社会人で「研究を武器にして収入を得る立場」になってから取得を目指しても遅くはないと考えます。
自分の卒業後の就職先を心配しなくて良い
社会人から博士進学すれば「ちゃんと就職できるか不安だぞ問題」から無縁な状態で博士号取得を目指せます。
理系学生の採用サービス「LabBase」を提供している株式会社POLが実施した博士課程に在籍する学生55名を対象にしたアンケートでは、以下のような結果が出ていますね。
博士に進学する上で最も強く不安に思ったことはどんなことでしたか。
・博士号取得後の就職に関する不安:40.0%
・学費に関する不安:23.6%
・博士号取得後に大学で研究を続けることへの不安:12.7%
・卒業できるかという不安:12.7%
・人間関係に関する不安:5.5%
(以下略)
また平成29年度の文部科学省資料「大学院の現状を示す基本的なデータ」によると、社会人博士数は年々増えており、平成28年度の博士進学者のうち約41%は社会人博士です。
昔に比べると社会人博士の受け入れ制度や博士号取得の支援が拡充されてきています。
それゆえ修士から博士へストレート進学しなくとも、社会人で博士号取得できる確率が徐々に高まっているのは間違いないと思います。
最悪、博士号を取得できなくてもダメージは最小限
これは先輩から聞いて「なるほどな」と思った話ですが、社会人の場合「博士号取得」に失敗してもダメージは最小限です。
というのも博士号の有無に関わらず会社から仕事はすでに与えられているわけで、取得できなかったといって「仕事が無くなりました」はないですよね。
博士号は自分のキャリアを広げるために有用ですが、それが無いと仕事が突然消えて途方に暮れるというものではありません。
一方で、修士課程から博士課程に進学した場合は、博士号が取得できるかは重要な問題ですよね。
「博士課程進学で失敗した場合の保険が欲しい」
という方は社会人になってから博士課程進学を目指すのが良いと思います。
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社会人から博士課程進学するデメリット5選
一方で、修士卒研究職が考える「社会人→博士進学するデメリット」は以下の通りです。
1つずつ解説していきます。
仕事、家族、+α(博士課程)はやはり厳しい
博士課程に進学すると当然のことながら「講義受講による単位取得」や「研究室ゼミの参加」、そして「博論執筆」などやることは多いです。
業務外時間がけっこうな割合で博士号取得関連に費やされるので、仕事・家族・語学勉強など進めながらも論文書いたりするのはキツイ。(ここに副業が入ってくると崩壊する)
「なんとなく博士号あったら便利かも」みたいなフワッとした感じで社会人博士を取得しようとすると、モチベーション保つのが難しいので注意されたし。
別に博士号を取得したから出世できるわけでもない
勘違いしている人が多いかもしれないのでお伝えしておきますと、別に博士号は「出世に絶対必要」ではありません。
また博士号を取得したからと言って出世するわけでもありません。
「博士号は足の裏の米粒。取らないと気持ち悪いが、取っても食えない」
という言葉からも推察できる通り、やはり博士号は「取得してから何をするか?」が大事で「取ったからすごい」とか「取ったから名声を得られる」とかそういう類のものではない。
博士号取得を進めている間に「博士号取得に興味ない同期」はどんどん仕事に没頭し、どんどん仕事で成果を出し、どんどん出世していく可能性をお忘れなく。
論文執筆は業務外でやることになる可能性あり
会社の雰囲気や、研究テーマの情勢(終わったテーマか現在進行形のテーマか)にも寄りますが、論文執筆するなら「業務外」にやる覚悟はしておいた方が良い。
特に終わったテーマの成果を論文化する場合は、業務中に書くのは難しいかなと。
修士から博士課程にストレート進学して博士号取得を目指している場合、「なんで研究室にいる間に論文書いてるんだよ」とか言う人はいないですよね笑
大学にとって学生に論文執筆させることは高度な専門性を有する人財育成のために必要なことで、ラボの運営にも関わる重要なことだからです。
もちろん論文を出すことが重要な研究テーマも企業にはたくさんありますので、そういうテーマを担当する場合は業務中に論文が書けます。
とはいえ必ずしもそういうわけではないので、陰でコツコツ頑張ることが要求されるのはデメリットと言えるでしょう。
博士号取得について社内で揉め事になる可能性あり
割と深刻なデメリットだなと思うのがこれでして、社会人で博士号を取得する際には非常に苦労する工程が存在します。
それは「博士号取得に使用する論文の共著者全てから同意書をもらう」という工程です。
たとえばあなたが大学の頃に執筆した論文を博論で一部活用するとしたら、その論文の共著に入っている指導教官全てから同意書をもらう必要があります。
もしあなたが研究室の指導教官と喧嘩別れしていたらどうなるでしょう?
多分、同意はもらえませんよね。
「なんでお前なんかのために俺がわざわざ同意しないといけないんだ」
こんな理由で論文の使用許可が下りず、博士号取得が数年延びた(=別途、新しい論文を書いてから取得した)、博士号取得を諦めたケースを実際に知っています。
修士から博士課程進学している場合はこんな悲劇はないと思うので、社会人で博士課程に進学する大きなデメリットとして考慮しておくべきと考えます。
異動・海外転勤で諦めざるを得なくなる可能性あり
社会人で博士課程に進学する場合、業務との両立で博士号取得に至らないケースだけでなく「異動・転勤に伴い強制的に諦めざるを得ないケース」があります。
実際に博士課程進学中であるにも関わらず、遠方や海外へ転勤となってしまい大学に通えなくなったケースも。
もちろん大学にはそういった場合に備えて「休学」という選択肢も用意されています。
たとえば東京工業大の博士課程では「休学は通算3年まで可能」とあります。
しかし異動や転勤(出向含む)で3年離れていると、世の中の情勢・家庭状況・キャリア状況など目まぐるしく変わっているはず。
結果的に休学したものの、再び復帰する余裕がなくて自主退学する可能性がある。
それが社会人で博士課程進学するデメリットだと考えます。
もし社会人で博士課程を取得するなら「タイミング」は非常に重要だと思います。
たとえば会社の方針が“5か年計画”なら「5か年計画の1~2年目から博士課程進学する」などですね。
せっかく進学するのであれば「会社の情勢に飲み込まれにくい時期はいつか?」を考えて進学するようにしましょう!
社会人で博士号を取得するキャリアもあるので焦らずともOK
というわけで『社会人から博士課程進学するメリット・デメリット』に関して解説しました。
最後にもう一度だけ復習しましょう!
社会人から博士課程進学するメリット・デメリット
メリット
- 「博士号を持っていない」劣等感から解放(キャリアにも活きる)
- 金銭的不安がない状態から取得を目指せる
- 入社後の職種ミスマッチを回避してから取得できる
- 自分の卒業後の就職先を心配しなくて良い
- 最悪、博士号を取得できなくても仕事はできる
デメリット
自分もそうでしたが、修士学生の段階だと「博士課程進学か?就職か?」の2択で死ぬほど悩むと思います。
ですが「就職してから博士号取得する」という選択肢も普通にあり得るということを強調したい。
学部4年~修士2年まで後悔が残らないほど全力で研究に没頭する
↓
修士卒で研究職・研究開発職・R&D職として内定をもらう
↓
配属ミスマッチがなく研究を仕事にできるようになってから博士号取得を今一度考え始める
この流れが僕は無難なのかなと思っています。
研究を仕事にできることが確定し、かつ「やっぱり研究って良いよね」と改めて実感できるようになってから博士号取得を志しても全く遅くない。
自分と同じように社会人で博士号取得を目指す方が増えると嬉しいですね。
というわけで当記事は以上です。
ではではっ
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